『心中宵庚申』で上演されるのは
中の巻と下の巻で、
 
『心中宵庚申』
上の巻は、上演されないのです。
bunraku.nov.2017.flyer.2
しかし、
今、
時代が求めているのは
上の巻では無いか?と思い、
あらすじを書かせていただきます。
 
 
八百屋半兵衛には
異母兄弟の弟
山脇小七郎が居ました。
 
小七郎は
17歳、見目麗しい若衆で
武士としてお城勤めをしていました。
 
同僚の金田甚蔵、岡軍右衛門、大橋逸平は
小七郎のことが大好きでした。
 
お城の台所で休憩していた兄・半兵衛に
3人は詰め寄り、
 
「弟のことを頼むのも馬鹿らしいけど、
小七郎のこと、
私に下さい。」というのです。
 
手紙を書くのに財産を尽くしたものあり、
贈り物の外郎に財産を尽くしたものありと
大騒ぎ。
 
半兵衛は驚き、
 
「お城の規則で
同性愛は禁止じゃないのか?
そんなことをすると弟は
打ち首じゃ」と言い返しました。
 
その言葉に
「当国は女性に手を出すのはご法度だが、
衆道(男性の同性愛)は
オッケーなんですよ。
3人のうち、誰にやると返事下さい。」と
返答するのでした。
 
小七郎は
兄の前に
 
「一通も封を切らないのが
皆さんの義理立て。」
 
と、今までもらったラブレターの束を
ドサッと置くのです。
 
そんな小七郎に
 
「その考え方になお惚れる」と
やんややんやの大騒ぎ。
 
半兵衛は
「拙者が見定めて、
いちばんの惚れ手のところへあげましょう。
コリャ、小七郎、死に装束せよ。」と言います。
 
半兵衛は
ラブレターの上書きを読み、
聞き覚えのない差出人の名前を目にします。
 
「小一兵衛とは
誰のことか。
御存知ないか」と尋ねると
 
「屋敷の中間(ちゅうげん)、
思いもよらぬ、
下衆(ゲス)めが」と、3人はせせら笑う。
 
「イヤそうじゃない。
衆道に身分の高下は無い。
その小一兵衛も呼ぼう。」と
半兵衛は判断するのでした。
 
白小袖に浅葱の裃、
覚悟を決めて
座につく小七郎。
 
半兵衛は語り始めます。
 
「惚れ手は4人。
惚られ手は弟1人。
うわべだけの恋では無く、
来世まで小七郎をかわいいと
お思いなら、
この場で刺し違え、
他人がかまわぬ来世での
念者と若衆になって下さい。
さあ、弟をやる。
どなたでも弟と来世の約束をする者は居ないか。」
 
小七郎の死に装束にビックリした3人は、
咳をしたり、モジモジしたりして、
その場を取り繕うとしました。
 
ご門わきの長屋から、
紺の着物の裾を引きからげて突然現れたのは
小一兵衛。
 
「お兄様のお手前、
恥ずかしいことながら、
小七郎さんに心を打ち込みました。
ご飯も喉を通らない程です。
 
来世で私を念者になさいますとは
ありがたいやら、悲しいやら。」
と白刃を取って立ち寄りました。
 
小七郎も引き寄せて、
あわやと見えた刀の間に半兵衛が飛び入って、
 
「男の意気地が見えた。
小七郎の真の惚れ手は
そなた1人。」
 
と、
小七郎と小一兵衛の仲を取り持つのでした。
 
ねっ、
面白いでしょ?
 
国立劇場制作課さん、
『心中宵庚申』上の巻、
上演しませんか?
 
ヒットすること
間違い無しですよ。
 
古典芸能案内人
天野光(アマノヒカル)でした。
 
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